「俺はただ、後悔したくないだけだ。わざわざ実家を離れてここまで来た選択を無駄にしたくない。だから、ひたすら足掻いてるだけだよ」

そう答えると、いつの間にやらこちらを見据える目にはいつもの輝きが戻っていて、その力強い眼差しと言葉が私を貫いてくる。
  

ああ、本当に何でこの人達は、こんなにも綺麗なんだろう。

海斗さんといい、俊君といい、荒野に咲く一輪の花のように、根深く、逞しく、そして美しく。

汚れることなく、咲き誇る信念。

私にも、そんな強さがあれば。


そう切に願いながら、思わず胸元に手を充てて、私も俊君の瞳をじっと見つめ返した。

すると、突然俊君は私の頭を少しだけ乱暴に撫でると、その場から立ち上がり、履いてたスリッパを脱いで部屋の中へと戻っていく。


「そういうことだから、水曜日の試合は必ず見に来いよ」

そして、背を向けたまま、ぽつりとそう呟いた後、私の返事を待たずに、さっさとリビングの方へ行ってしまった。