「危うく試合に負けそうになったんだ。俺のパスミスのせいで。なんとか仲間がフォローして勝てたけど……」

ぽつりとぽつりと答えてくれた声は、心なしか少しだけ震えているような気がして。
一先ず私は俊君の話に黙って耳を傾ける。

「こんなとこで足引っ張ってる場合じゃねえのに。うちは常勝が当たり前で、ミスは絶対に許されない。だから、もっと練習しないと」

そこまで話すと、今度は強く拳を握り締め、自分の手元に視線を向けた。


そこから伝わってくる大きなプレッシャー。

俊君が上京してまで入った強豪校であれば、きっとそれは計り知れないのだろう。


詳しい事までは分からないけど、想像しただけで怖くなるし、私ではとてもじゃないけど耐えられない。

でも、俊君は逃げ出す事なく真っ直ぐと対峙している。

本当に、なんでそんなにも……

「なんで、そんなにも強くいられるの?」

俊君の揺るがない意志をみせられて、心の奥で浮かび上がってきた疑問がつい外に漏れ出る。

すると、俊君はきょとんとした目で私を見ると、不意に口元を緩ませて小さく鼻で笑ってきた。