手紙を読み終えると、胸の奥がじんわりと熱くなり、何だかんだ言っても母親なんだと改めて思う。

居候生活も慣れてきて、海斗さんや俊君がいるから毎日賑やかで楽しいけど、ホームシックがないわけではない。

やはり、時折母親を思い出しては会いたくなり、こうした温もりに触れると余計寂しさが募る。


「おい、加代」 

その時、感傷に浸っている中、突然開いた扉の音に思いっきり肩を震わせた。

「しゅ、俊君!?もう入る時はちゃんとノックしてよっ!」

不意をつかれ、激しく鳴り響く鼓動を抑えながら、私は頬を膨らませて俊君を軽く睨む。

「っあ、悪い」

しかし悪びれた様子もなく、上下黒のジャージに着替えた俊君は頭をかきながら入り口前の壁にもたれ掛かった。


「そういえば、言い忘れたと思ってさ。来週の水曜の放課後、練習試合でお前の学校行くから」


「……え?……あ、う……」


バタン。


まだ最後まで返事をしていないのに、俊君はそれを待たずして、さっさと部屋を出ていってしまった。