「……加代ちゃん、焦り過ぎ」

寝ていた筈の海斗さんから、突如笑いを噛み殺したような声が聞こえ、私は目を丸くしながら視線を向けると、寝起きとは思えない程冴えた眼差しでこちらを眺めている。


「か、海斗さん起きてたんですかっ!?」

「うん。加代ちゃんに呼ばれた時から」


焦りまくりの私とは裏腹に、しれっと言って退けて悪戯な笑みを浮かべる海斗さん。

その言葉に体中の温度が更に上昇し始め、恥ずかしさが込み上がってくる。

「そ、それって私をからかってたんですか!?海斗さん酷いですっ!」

こっちは息苦しくなる程翻弄されたというのに、平然としている海斗さんに何だか悔しさを感じ、私は頬を膨らませながら思いっきりそっぽを向いた。

「ゴメンね加代ちゃん。それより何か僕に話しがあるんだよね?お願いだから、こっち向いてくれないかな?」

それなのに、まるで、蕩けそうな程の優しくて甘い声と、寂しげな目でねだられてしまい、その破壊力は計り知れず。

一瞬にして心を持ってかれた私は、言われた通り海斗さんの方へと向き直し、今日の出来事を話し始めた。