人生初めての二人乗りに少しの恐怖心があったけど、暫く走っていると徐々に慣れていき、段々と風を感じる余裕が出来始めてきた。


そのせいだろうか。

先程から俊君の逞しくて広い背中ばかりに意識が向いてしまい、心音が体中ずっと激しく鳴り響いている。

鍛えているのか、お腹回りは硬くて少しでこぼこしていて、ワイシャツ越しだけど触れた感じで腹筋が割れているんだというのが分かる。

袖を捲り露になる腕は太く、血管が浮き出ていて。

海斗さんの体もそれなりに引き締まっていたけど、それとはまた違う鍛えられた筋肉質の体。

そこから伝わる男らしさ。


……だめだ!
これじゃあ、余計に意識しちゃう!


ただでさえ免疫がないのに、墓穴を掘るようなことをしてしまった私は、雑念を振り払う為に小さく首を振る。


とにかく、気を紛らわす為、私は肌で感じる爽やかな風に集中していると、気付けばこれまでの悶々とした気持ちは消えていて。

今は純粋に心地良いと思えるのは、これも強引過ぎる俊君のお陰かなと。

心の中でそっと感謝の言葉を送り、まだまだ暮れることのない真っ青な空を仰いだ。