乗れって……つまり二人乗りってことですか?

「俊君、それ明らかな道交法違反だよ?警察に見つかったら2万円以下の罰金又は科料と定められてるよ?」

一瞬頭の中で、土手沿いをカップル達が走る昔の少女漫画のワンシーンを想像してしまったけど、今のご時世そうではないと。

冷静に突っ込みを入れると、即座に俊君の舌打ちが返ってきた。

「んなこと知ってるよ!あと数百メートルの距離だし、この時間は人も車通りもないから平気だよ。いいからごちゃごちゃ言わずにさっさと乗れ!」

俊君は少し苛立ちながら、私から強引に通学鞄を取り上げると自転車の前カゴにぼすっと置いた。

もうこれは乗るしかない状況に追い込まれた私は、生唾を飲み込み恐る恐る自転車の荷台に手を掛ける。

とりあえず、横向きに座ると、自転車がぐらつき、私は軽い悲鳴をあげて咄嗟に俊君の腰に手を回してしまった。


「ご、こめんなさい!」  

瞬間的に顔から火が出る程熱くなり、私は慌てて手を離す。

「何言ってんだ?危ないから早く掴まれよ」

それをとても呆れた目で見られてしまい、そもそも二人乗り自体が危険行為なのでは?と更に突っ込みたくなった手前。

またもや怒られそうなので、私は何も言わずに恐る恐る俊君の腰に片手を回した。

そのタイミングで、俊君は地面を軽く蹴り自転車は風を切って走り始める。