「おっ、加代じゃん」


その時、突然脇から聞き慣れた軽快な声が響き、振り向くと、そこには真っ青なエナメルバックをカゴに入れて自転車に股がる俊君の姿。


「俊君!?随分と早かったんだね」

普段ならまだ部活中なのに、こんな時間にばったり遭遇するとは。珍しいことに私は目を丸くする。

「放課後にグランド整備が入って今日は部活中止なんだよ。ったく、そろそろ全国大会に向けて調節していきたいのに、いい迷惑だ」


そう不満げな表情で説明する俊君に、以前教えてくれた話をふと思い出した。


そっか、俊君にとってはこれが今年最後の全国大会だし、確か将来の夢にもかかっているって言ってたっけ。

そんなことをぼんやり考えていると、何故かこちらを凝視してくる俊君に、私はその場でたじろぐ。

「ど、どうしたの?私の顔変?」

「……いや。後ろ姿が元気なさそうだったから。何かあった?」

すると、まさかの図星をつかれ、焦った私はつい視線を逸らしてしまった。