その場に取り残された私は、暫くの間二人が消えた後も屋上の扉をひたすら眺め続けた。
まさか、ここで岡田君が連絡先を教えてくれるとは思わかった。
それに、数年ぶりにあの時と同じ呼び方をしてくれたのが凄く嬉しくて。
いつまでも夢心地に浸っていたいところではあったけど……。
……だけど。
去り際に残した紺野さんの一言のせいで、これまでにない程嬉しい出来事なのに、何故かそこまで気持ちが入ってこない。
誰よりも側にいるって、どういう意味なんだろう。
それは常に一緒にいるからってこと?
つまり彼女ってこと?
でも、それなら紺野さんの性格上あの場ではっきり言いそうだけど……。
この際だから岡田君に直接聞いてみるとか?
……いや。
それは流石に怖過ぎる!
「もう、いい。帰ろう」
これ以上ここで悶々としていても仕方がないので、私は岡田君に貰った連絡先を大切にしまうと、深い溜息を一つはいてから、屋上を後にしたのだった。