視線の先にいたのは、血相を変えて仁王立ちする紺野さんの姿。

しかも、書店で会った時のように、物凄い剣幕で睨まれてしまい、私は思わず一歩引いてしまう。


「佑樹!コーチが探してたよっ!連絡しても全然出てくれないから探したんだけど!」

すると、紺野さんは私には見向きもせず、ずかずかと間に割って入ると、岡田君の片腕を掴み、まるで私から引き剥がすように無理矢理腕を引っ張る。


何でここに居るって分かったんだろう……。

私はその勢いに圧倒されていると、去り際に突然岡田君から何かを渡され、咄嗟にそれを受け取ってみると、それは小さく折り畳まれたメモだった。

一体何が書かれているのか広げると、そこには岡田君の電話番号とID番号で、私は驚きの余り顔を顔を上げる。

「じゃあな、加代。また明日学校で」

そして、岡田君はメモについて特に触れることなく、軽い挨拶をして颯爽とこの場を去って行った。


私は未だ状況が受け止めきれないまま呆然としていると、突然脇から紺野さんの舌打ちが聞こえ、びくりと肩が震える。

「あんた、幼なじみだかなんだか知らないけど、調子に乗らないでよ。言っとくけど、私の方が誰よりもずっと佑樹の側にいるんだからね」

それから、射抜くような眼差しを向けて警告された後、最後に意味深な言葉を残して岡田君の後を追いかけて行った。