「それより、岡田君は私のこと気付いてたの?」

とりあえず、気持ちが落ち着き始めたところで、私は長年抱え続けていた疑問をここでようやく吐き出す。

「当たり前だろ。入学式の時から知ってるよ。だけど加代が全然こっちに気付いていないから、忘れられたのかと思った」


一体どんな返答が来るのかと思いきや。

始めから気付いてくれていたのは喜ばしい話だけど、それ以上に彼のあまりの鈍感具合に私は一瞬言葉を失った。


これまで一年以上も物陰にずっと隠れて見ていたのに。

そのせいで紺野さんからウザいと煙たがられたくらいなのに。

当の本人は全く気付いていないどころか、忘れられていると勘違いしているなんて。

岡田君はそれ程周りに興味がないのだということが、これでよく分かった。


それが良いのか悪いのか。

何だか複雑な心境に、暫しの間遠い目で彼を見る。