「もう逃がさないぞ」

その視線の先には、眉間に皺を寄せてこちらを凝視してくる岡田君の姿があって。

予想だにしない事態に、思考回路は停止してしまい、言葉が何も出てこない。

しかし、そんな無反応な私にはお構いなしと。

岡田君はそのまま私を引っ張り、来た道とは逆方向へと歩き出す。

「あ、あの、岡田君!?」

そこでようやく声が出せるようになり、そして、これが再会して初めて彼の前で名前を口にした瞬間。


彼に認識されたことも。

話しかけられたことも。

こうして、触れられていることも。

全部が初めてなのに、その喜びに浸る隙を与えることなく。


すれ違った女子生徒達に二度見されたり。

何やら、物凄い形相で睨まれたり。

後ろ指をさされて、ヒソヒソ話をされたりと。


通路を進むにつれ、女子生徒達にまるで親の仇でも見るような目を向けられてしまい、夢心地気分は見事にぶち壊されてしまう。