“笑えばいい”


それは、海斗さんが鏡の前で教えてくれたこと。

私はその言葉を呪文のように何回も唱えていると、心が次第に落ち着き始める。


そして、ゆっくりと口元を緩ませ、私は話を誤魔化しながらクラスメートの質問に一つ一つ答えていった。

ここに来るまで、少しの期待を抱いていたけど、想像以上の反響だったからなのか。

気付けば朝の暗い気持ちは消え去っていて、その代わり、今自分はクラスに溶け込んでいるという喜びが湧いてくる。

それから私は、朝のホームルームが始まるまでの間、純粋に女子達との会話を楽しむ事が出来た。


授業が終わった後も休み時間や移動時間の合間、男女共にぽつりぽつりと話し掛けるようになり。

中には、今まで全く話したことのない人がいたりと。

髪型を変えて笑顔を見せるだけで、こんなにも周りの態度が変わるとは思いもよらず。

あまりの変化に戸惑いながらも、私の心は終始満たされた気持ちでいっぱいだった。