「はい、お疲れ様。流石カイトだな。色味が一気に増したよ」

すると、撮影終了を告げるカメラマンの満足そうな声に私はハッと我に返った。


……終わった……。

その瞬間、海斗さんの熱からようやく解放され、全身の力が一気に抜け落ち、危うくその場で崩れ落ちそうになった。

「加代ちゃんもお疲れ様。お陰でコンセプト通りの絵が出来たと思う」

それから、未だ勢いが劣ることない鼓動と、火照る体を何とか鎮めようとしたところ。
嬉しそうに微笑む海斗さんのある一言が引っ掛かった。


香水の宣伝撮影ということは分かったけど、結局のところ何で私が採用されたのかが分からない。

ブランド名は知らないけど、この香水も学生が使うにはとても高価そうだし、どちらかと言えば大人向けのような気がするけど……。

「あの、海斗さん。コンセプトって何だったんですか?」

色々考えてみたものの、やはり答えなんて見出せるはずもなく、私は堪らず疑問をぶつけてみる。

「今回は“ちょっと背伸びした女の子”。だから、加代ちゃんの初々しさがしっくり来るかと思ったんだ」

そう自信を持って教えてくれたテーマに、そこでようやく先程のシチュエーションの意味が分かり、一度引いた熱が再び上昇し始める。

「本当に、楓には後でお礼を言っとかなきゃね。お陰で、こうして綺麗な加代ちゃんを皆の前でお披露目する事が出来たんだから」

すると、更なる衝撃的発言に、私は一瞬目が点になった。