「加代ちゃん、こっちにおいで。一緒に鏡で見てみよう」

すると、海斗さんはやんわりと微笑みながら手を差し伸ばしてくれた瞬間、まるでこれから私を別世界へ連れて行ってくれるような。

そんな考えがふと脳裏をよぎりながら、私は海斗さんの手を取る。


こうして全身鏡のある場所まで案内された私は、徐々に心拍数が上がる中、心を落ち着かせる為にゆっくり深呼吸をした後、徐に鏡の前に立つ。


その瞬間、私は自分の目を疑った。


そこに映るのは、白いワンピースを完璧に着こなしている女の子。

艶のあるサラサラの髪に、華やかな顔立ち。
さり気ないアクセサリーと、ヒールのある靴。

これら全てが調和し、洗練された自分の姿がそこにある。
 


「……綺麗……」


無意識に溢れ落ちた、これまでずっと望んでいた言葉。

以前の自分じゃ考えられなかったのに、こうして躊躇う事なく口に出せたことが、何だか感慨深くて。

それから、もっと全体を見てみたくて、私は鏡の前でゆっくりと回ってみた。


「うん。とてもよく似合うよ」

すると、そんな私を隣で見守っていた海斗さんの後押しする一言に、私は自然と笑みが溢れる。

その時、海斗さんの手が突然伸びてきて、私の肩にそっと乗せると、改めて鏡の前に優しく向き直された。

「そうだね、笑った方がいい。加代ちゃんは、笑っている時が一番輝いて見えるから」

そして、自信を持って教えてくれた海斗さんの言葉が心の奥深くにまでじんわりと響いてきて、何かがふっ切れた気がした。