すると海斗さんは口元を緩ませると、怪訝な表情を見せる責任者にそっと耳打ちをした。

「実は少し試したいことがあって……」

それから小声で話始めた海斗さんの周りにスタッフ達が集まり、私を外して何やら小さな会議が開かれる。

私は終始混乱したままその状況を呆然と眺めていると、暫くして結論に達したのか。人集りがぱらぱらと解けていく。


「……ということで、加代ちゃん一緒に来てくれるかな」

「え?何がですか?……あ、あの。海斗さん!?」

全くもって話が見えてこない私はポカンとした表情で首を傾げるも、そんなことにはお構いなしと。

海斗さんは有無を言わさず私の腕を掴み、そのまま引き摺るようスタジオを後にした。