そこからエレベーターで三階まで登り、通路を歩いていると、段々と人通りが多くなっていき、すれ違う人の視線がチクチクと突き刺さる。


やっぱり海斗さんみたいな一流モデルが集まる場所に、女を捨てたような格好の私が足を踏み入れるのは、場違いにも程があるのだろうか。


モデル事務所とあって、周囲の人達の服装はとても洗練されているし、スタイリッシュで華やかだ。


その中で、この大きな黒縁眼鏡とジーパンにカーディガン姿は余計悪目立ちして、海斗さんにも恥をかかせているのではと。


今になって不安を感じ、悶々としていると、気付けば私達はプレートが掲げられた事務所の前に到着していた。

重厚そうなガラス扉に海斗さんが手をかけた瞬間、中から煙草の煙が一気に押し寄せてきて、私は思わず咳き込んでしまう。