「っあ、カイトさんお疲れ様です」

すると、受付で立っていた一人の若い女性がこちらに気付き、軽く会釈をしてくる。

「綾さんならもう到着してますよ」

そして、営業スマイルというよりは、まるで恋人にでも会ったような蕩けた笑顔に、そこから女性の心境が瞬時に読み取れた。

「ありがとう。それより、通行証一枚くれるかな。ちょっと中を見学させたくて。綾さんには伝えてあるから」

そう言われて、海斗さんの後ろに控えていた私に目を向けた途端、彼女の表情が一瞬崩れたのを私は見逃さなかった。

「分かりました。では、ごゆっくり」

それから、今度は完全なる営業スマイルで通行証を差し出され、一先ず恐る恐るそれを受け取る。