「……や、やっぱり私みたいなのが行ったら不味くないですか?」


次第に周りの風景は高層ビルが建ち並び、都心部へと近付くにつれ、私の不安はどんどん膨れ上がる。


「大丈夫、もっとリラックスしていいから」

そんな私を他所に、海斗さんはいつもの爽やかな笑顔を向けた。

その瞬間、頬に熱を感じた私は反射的に目を反らしてしまい、早くなる鼓動と共に、あの時の記憶が脳裏に蘇る。



すがり付くように自分の想いを吐き出し、それを優しく包み込んでくれた海斗さんの腕の中。

細身だけど胸板はとても厚くて、香水のような石鹸のような、兎に角とてもいい匂いがして、妙に気持ちが落ち着いた。

その感覚があれからずっと抜けきれなくて、今でも海斗さんを見ると胸が高鳴ってしまう。

けど、それを何時までも引き摺るわけにはいかないので、いい加減しっかりしなくてはと。

そろそろ自分に喝を入れようと、私は気持ちを入れ替える為窓の外に目を向けた。