「……こんな所にいたんだね」
その時、ふと背後から聞こえた声に、私は勢いよく顔を上げた。
「ずっと探したよ。携帯に何度か連絡したけど全然繋がらないし」
そこには心配そうな面持ちで私の顔を覗き込む海斗さんが立っていて、不意を突かれた私は一瞬面食らった。
「……あ、ご、ごめんなさい。私サイレントモード解除してませんでした」
言われた通りスマホを見ると、そこには伯母さんや海斗さん、俊君の着信履歴が無数に残っていた。
時刻に目を向けると既に八時を回っていて、店を出てからかれこれ一時間は経過していた事に、私は慌ててその場から立ち上がる。
その時突然海斗さんは隣に座り込み、この場を離れようとする私を引き止めるように腕を掴んできた。
「何かあった?……別に話したくないなら話さなくてもいいけど、せめて加代ちゃんの気持ちが落ち着くまでは側にいるよ」
思いがけない海斗さんの行動に一瞬戸惑ったけど、いつになく真剣な眼差しに捉えられ、私は吸い込まれるように座り直した。