それから既に数分は経過しただろうか。

話し掛けない以上ここで突っ立っていても仕方ないので、私はそろそろ図書室へ向かおうと踵を返す。



「佑樹、朝からお疲れ!」

すると、岡田君しかいないはずの体育館から突然一人の女子生徒の声が耳に飛び込み、再び扉の隙間を覗くと、そこにはあの紺野麻衣の姿があった。

今度は変な焦燥感が襲い、違う意味で動悸が激しくなってきた私は、息を殺して二人の様子を伺う。



「なんだ、おまえも来たのかよ」

「だってもうすぐインターハイ出場予選じゃん。佑樹がまた一人で朝から頑張ってるのかなあ~って思って。はい、これ差し入れ」

「さんきゅ」


岡田君は滴る汗を袖で吹きながら、笑顔で紺野さんが差し出してきたスポーツドリンクを手にとった。