一括りに〝詰襟のドレス〟と言っても、胸の辺りで生地を切り替えたものや襟の部分がレース状になっているもの、刺繍が入ったものなど様々なデザインがある。また、毛皮や毛糸を編んだショールの数々はアーヴィ国では身に着けることがなかったので、目移りしてしまう。

「好きなものを選ぶといい」
「はい。ありがとうございます」

 ウィルフリッドに言われてそう答えたものの、どれを選べばいいのかなかなか決められない。

「あの、見立てていただけるかしら?」

 アリスが頼むと、仕立て屋は「もちろんです」と頷いた。

「このあたりはどいかがでしょうか? 可愛らしい雰囲気が妃殿下にぴったりでございます」

 仕立て屋が見せてきたのは、スカートの部分が膨らんだピンク色の可愛らしいデザインだった。

「あとは、こちらもよろしいかと」

 次に手に取ったのは生地自体に刺繍が施されたベージュのドレスだ。刺繍糸が黄色なので、明るい印象を受ける。
 その後も数着案内されたが、どれも捨てがたい。

「あの、陛下。どれがいいと思いますか?」

 アリスは迷い、ウィルフリッドに問いかける。

「……全部買えばいいだろう」