その日の午後は、ちょうどアメリアとお茶会の約束をしていた。王宮に遊びに来てくれたアメリアに、アリスは紅茶やお菓子を振る舞う。

「おすすめの仕立て屋? いくつかあるけれど……どんなドレスを作るの?」

 さりげなくアメリアに仕立て屋について尋ねると、彼女はいくつかお店を思い浮かべたのか、宙に視線を投げる。

「普段使い用と畏まった席用の両方を作りたいと思っています。実は、陛下が見立ててくださることになっていて──」
「ええっ、ウィルが? 本当に⁉」

 アメリアは驚いたように目を見開く。彼女にとっても、ウィルフリッドがそんなことをしてくれるなんて意外だったのだろう。

「はい」

 アリスはおずおずと頷く。

「まあ! それは一大事だわ。ドレスだけじゃなくて靴やアクセサリーもきちんと選ぶように伝えておかないと! そうね、城下のミセストールの工房なんてどうかしら? あとは、サロンマリーネもおすすめよ! わたくし、どちらも御用達だから連絡してすぐにカタログを届けさせるわ。絶対に素敵なドレスができるわよ」

 アメリアは興奮気味に言う。そして、ふふっと笑った。

「実は、ウィルから結婚するって聞いたときね、少し心配していたの」
「え?」
「あの子ってあの通り、人をあまり寄せ付けないでしょう? だから、お相手の方と上手く行くのかなって。でも、アリス様のご様子を見ていると、仲良くなさっているみたいでよかったわ。この分だと、王太子殿下のお顔も近いうちに見られるかしら?」