「気を遣わなくてもいい」
「気は遣っておりません。本当に一緒に行きたいのです。だって、陛下が見立ててくださるってことですよね?」

 アリスは夢中で話す。そして、ハッとした。

(もしかして──)

 ここ最近、夕食をいただく際にアリスは積極的にウィルフリッドに話しかけるようにしていた。最近そこで、好きな本とお気に入りのシーンを話した。騎士の男性が庶民の恋人にドレスをプレゼントし、舞踏会に連れてゆくシーンだ。

 少し状況は違うけれど、男性に服を選んでもらうという点は同じだ。

(あんまり興味なさそうな様子だったのに……)

 実はちゃんと聞いてくれているということがわかって、何よりも、ウィルフリッドが自らアリスを誘ってくれたのが嬉しかった。

「陛下からお誘いいただけて、嬉しいです」

 アリスは満面の笑みを浮かべる。

「……そうか。では、近日中に連れて行こう。行きたい店があるなら、ピックアップしておいてくれ」
「はい!」

 心なしか、いつもよりもウィルフリッドの表情が柔らかくなった気がした。