感心した次の瞬間、エルゴはその場にいる誰もが想像していなかった宣言をした。

「よって、このハーレムは取り潰す。婚姻関係も解消だ。これにて解散! 各自、荷物を纏めて祖国に帰るように」

 エルゴは大きく両腕を広げ、解散を表現する。

(え? ええー!)

 これにて解散、でハーレムを終了させるなど聞いたことがない。呆気にとられる妃たちを尻目にし、エルゴは話は終わったとばかりに壇上から下りる。

 そのとき、「お待ちください!」と鋭い声がした。

「そのような話は承服いたしかねます。そもそも、祖国に戻されても実家も困ってしまいますわ。それに、幼い姫たちはどうするおつもり?」

 一歩前に出たのはこのハーレムの絶対的王者、ルシアだ。エルゴはちらりとルシアを見て、ふんと鼻を鳴らした。

「姫たちは責任をもってこちらで育てる。だが、妃たちは帰国していただく。このハーレムの予算の実に九割がそなたに費やされていたことを私が知らないとでも? 今年に入ってからだけでも純金のクローゼットに金剛石で縁どられた純金の手鏡、真珠をちりばめたドレス……。ああ、高級酒を満たした風呂というのもあったな。その風呂も純金製だろう?」