秋も深まってきた今日この頃、システィス国では朝晩の気温がぐっと低くなる。
 アリスは城下にある病院と福祉施設を視察し、馬車で王宮に戻ってきた。

「ううっ、寒い」

 馬車を降りたアリスは自分の体を抱き締めるように腕を回す。今日は晴れているし、まだ季節は秋だ。それなのに、既にアーヴィ国の真冬と同じくらい寒い気がする。
 馬車に乗ってじっとしていたから余計に寒く感じるということを考慮しても、やっぱり寒い。

「どうして皆さん寒くないのかしら?」

 アリスは両腕を手でこすりながら、ぼやく。町には多くの人々が往来していたし、王宮内にも貴族や女官、騎士がいるが、アリスのように寒さで震えている人は誰もいない。
 これまでの人生で自分のことを寒がりだと思ったことはなかったのだが、システィス国にいると自分だけが寒がりのように思えてくる。

(きっと、幼い頃からこの環境で育っているから寒さへの耐性があるのね)

 アリスはすぐ横を歩くエマを窺い見る。エマも、アリスよりも薄着なのになんともないような顔をしている。

(寒さへの耐性……)

 それは、何年か住めばアリスにも身に付くものなのだろうか。このままでは冬場、寒さのあまりに動けなくなってしまいそうだ。