アリスはエマに自分の胸の突っかかりを話すべきか否か迷った。

 初めて会ったときからずっと、あの鋭さの中にどこか寂しげな色が見える瞳が気になっていた。何か心に抱えているような、そんな気がするのはアリスの気のせいだろうか。

(でも──)

 雷が鳴る夜にアリスを心配して寄り添ってくれたウィルフリッドの優しさは、本来の彼のものである気がした。

 本当の彼を知りたい。今日の昼間に見たあのとびきりの笑顔を、自分も見てみたい。
 そんな欲が、むくむくと湧いてくる。

(そうよ。妻であるわたくしがそれをしなくて、誰がするというの!)

 アリスはぐっと手を握って決心する。

「ねえ、エマ。陛下について、教えてくれる?」

 アリスはエマを見上げた。