(そんなことになったら、誰だって人間不信になるわ)

 アリスはちらりとウィルフリッドの顔を窺い見る。
 ウィルフリッドは静かに、車窓から町の様子を眺めていた。端正な横顔は相変わらず冷淡な印象で、青い瞳はどこか寂しげだ。

 前国王殺しの噂が真実なのか誤解なのか、アリスに真相はわからない。

(でも、わたくしは仮初とはいえ陛下の家族なのだから──)

 彼の本当の姿の姿にもっと触れてみたい。自分にはもっと話してほしい。
 そう願うのは、贅沢なことなのだろうか。




 その日の夜、アリスはどこか悶々とした気持ちだった。

「アリス様。元気がないように見えますが、どうかなさいましたか? デートで何かあったのですか?」

 エマがいち早くアリスの変化に気付き、心配そうに声を掛けてくる。

「ううん、デートは楽しかったわ。とっても素敵な美術品をたくさん見られて、大満足よ。ただ──」
「ただ?」

 エマは小首を傾げる。