「兄上の度重なる散財により、国庫は極めて厳しい状況にある。議会はこれを非常に重く受け止め、兄上の王太子廃位を決定した。新たな王太子は私だ」

 思ってもみなかった電撃発表に、その場にいた妃たちに激震が走る。アリスも驚いたひとりだ。

(じゃあ、わたくしたちはこれからはエルゴ殿下の妃になるってことかしら?)

 ここは王太子専用のハーレムだ。クリスが王太子でなくなったなら、次の王太子であるエルゴがここの主ということになる。

「私には、国のためにこの傾きかけた財政を健全化する使命がある。散財の一因として、ここのハーレムがある。気に入った妃たちに乞われるがままに宝石やドレスを贈り、その額は国家予算の五パーセントを超えるほどだ」

 エルゴのさらなる言葉に、アリスは仰天した。
 国家予算の五パーセントを自身のハーレムに費やすとは、なんという大盤振る舞いだろう。ちなみに、アリスは全くその恩恵を受けていないが。

 これはきっと、お前たちの予算を削るという宣告に違いない。その場にいる誰もがそう思って覚悟した。

「私はこのようなハーレムは不要だと思っている。妃は、愛する女性ひとりで十分だ」

 エルゴは胸に手を当て、力説する。おやっとアリスは思った。

(見た目によらずロマンチックな人なのね)