馬車に乗り込むと、軽快な足音を立てながら馬が走り出す。

「今日はどこに行くのですか?」

 アリスはわくわくしながら、ウィルフリッドに問いかける。

「姉上からは、城下にある美術館のチケットをもらったのだが──」
「まあ、美術館ですか! 実はわたくし、絵を見るのも描くのも大好きなんです」

 アリスは目を輝かせる。

 昔から、絵を見るのも描くのも好きだった。小さな頃は、宮廷画家の後ろをちょこまかと付いて行っては一緒に絵を描こうとして、よく両親に呆れられたのを覚えている。
 アメリアやエマにはそのことを少し話していたので、ウィルフリッドに美術館を勧めてくれたのだろう。