約束のデートの日、アリスはエマにより入念に着飾らされていた。

「あの……エマ? 今日は随分と髪を結うのに時間がかかっているのね」
「だって、今日はデートですよ? 陛下とのデート! これが気合を入れずにいられましょうか」

 エマはぐっと拳を握ると、フンと鼻から息を吐く。

 アリスも最近知ったのだが、エマは元々アメリアの侍女だったそうだ。アリスが嫁いでくると知ったアメリアが是非この人をと推薦して、アリスの侍女になったという。
 だから、エマとアメリアは今でも親交があり、アリスとウィルフリッドのデートのことも情報が筒抜けだった。

 エマはアリスの髪の毛をサイドから編み上げ、ハーフアップにした後ろの結び目に花を模した細工の髪飾りを着ける。そして、編み上げのところどころにも同じ花の小さな飾りを着けた。

「さあ、できましたよ」
「ありがとう。これで陛下の横に立っても恥ずかしくないわね」

 今日着ている服は、今持っている服の中で特にお気に入りの一着だ。
 淡い水色のワンピースで、裾にはレースの飾りが、腰の部分にリボンが付いている。街歩き用なので決して華美ではないのだが、さりげなくあしらわれた飾りのおかげで清楚に見えるのだ。

「元々恥ずかしくなんてありません。今日はいつも以上にお美しいので、陛下も惚れ直すことでしょう」

 惚れ直すも何も、元々惚れられていない。けれど、エマに褒められ悪い気はせず、アリスははにかむ。 
 ちょうど準備が終わったタイミングで、トントントンと部屋をノックする音がした。

「……準備はできたか?」