ウィルフリッドはアリスをちらりと見て、ふむと考え込む。

「いや、行こうか」
「え?」
「姉上のことだから、この行先には既に我々が行くと伝えて根回ししているはずだ。国王夫婦が来ると思って意気込んで待っていたのにだれも来なかったら彼らは少なからず意気消沈するはずだ」
「それはそうですね」
「だろう? それとも、俺と出かけるのが嫌か?」

 ウィルフリッドは頬杖をついて、アリスを見つめる。

「いいえ、ちっとも! 是非一緒に出掛けたいです!」

 アリスは身を乗り出して答える。その勢いに圧倒されたのかウィルフリッドは少し目を丸くして、ふっと笑みを見せる。

「では、決まりだな。楽しみにしておこう」

 ウィルフリッドはそれだけ言うと、すっくと立ちあがりアリスの部屋を出て行く。アリスは呆然とその後ろ姿を見送った。

(今、笑った?)

 いつもしかめっ面しか見せないウィルフリッドが、ほんの僅かだけど笑ってくれた。
 なんだかそれが、とても嬉しいことのように感じた。

 ◇ ◇ ◇