てっきり冗談かと思っていたが、アメリアはアリスとのお茶会のあとに本当にウィルフリッドに手紙を出したようだ。
 姉から『重要』と赤字で書かれた手紙が届けば、ウィルフリッドとて目を通さざるを得ない。封を開くと、ウィルフリッドの手元から一枚の紙がハラハラと舞い落ちる。拾い上げた紙には、新妻をデートに誘わないとはけしからんという説教が綴られていた。一緒に美術館のチケットも同封されていた。

【ウィルへ 可愛い妻が一生懸命王妃として頑張っているのに、慰労のデートにも誘わないなんてどういうつもりなの? お姉様はあなたをそんな気の利かない子に育てた覚えはありません! アメリアより】

 育てるも何も、ウィルフリッドとアメリアはひとつしか違わない。
 母はウィルフリッドの産後間もなく、父と兄はウィルフリッドが十二歳のときに亡くなったので、確かにアメリアが一番の年長者ではあったが。

「あの、陛下。どうぞお気になさらずに」

 アリスは眉根を寄せたままのウィルフリッドにおずおずと告げる。
 アリスは自分がお飾りの妃であることを理解しているし、ウィルフリッドが忙しいこともわかっている。彼を邪魔しようという気は一切ないのだ。