ウィルフリッドはアリスと視線を合わせるようにしゃがむ。

「雷が苦手なのか?」
「申し訳ございませ……きゃーっ」

 再び雷が落ちる轟音が響き、アリスは悲鳴を上げる。間違いなく雷が怖いようだ。

「いつもどうしていたんだ?」
「ハーレムでは仲のよい妃が、雷がおさまるまでずっと一緒にいてくれました」

 ウィルフリッドは眉根を寄せる。ここはハーレムではないので、彼女と仲のよい妃などいない。侍女も仕事があるので付きっきりにはなれないだろう。

「あの……お構いなく。陛下はお戻りください」

 アリスはへらりと笑うが、強がっているのは明らかだ。

(見ていられないな)

 ウィルフリッドははあっと息をつくと、「行くぞ」と言ってアリスを両腕で抱える。初めて抱き上げるアリスは、小柄なこともあって想像以上に軽かった。

「へ、陛下⁉」

 アリスは動揺したように叫び、顔を赤くする。

「今日はもう少しアリスと話したい気分だ。リビングに行こう」

 王宮の中には、国王の家族が過ごすためのリビングルームも備えつけられている。ウィルフリッドはアリスを抱きかかえたまま、そこに向かった。

「申し訳ございません……」
「構わない。耳でも塞いでおけ」