ウィルフリッドは考える。アリスの言っている提案は、一理ある。それに、失業率の低下は国民の生活満足度の上昇と税収の増加に寄与する。

「労務省の大臣に伝えておこう」
「はい、是非!」

 笑顔でアリスは頷いた。

 一時間ほどで食事を終えると、アリスは私室に戻り、ウィルフリッドはその日の状況に応じて執務室に戻ったり私室に戻ったりするのが常だ。

 その日も、食事を終えたふたりはそれぞれの部屋に戻ろうと立ち上がった。
 そのとき、外から「ドッカーン!」と大きな音がした。

「雷か」

 ウィルフリッドは外を見る。既に暗くなった空がピカッと光るのが見えた。
 特に気にせずにそのまま部屋に戻ろうと思ったそのとき、アリスの様子がおかしいことに気づいた。顔が真っ青で、小刻みに震えている。

「おい。体調でも悪いのか?」
「いえ。大丈夫です」

 そう言って首を左右に振るが、明らかに様子がおかしい。

(一体どうしたんだ?)

 そう思った次の瞬間、外から再びドッカーンと音がした。

「きゃああー!」

 アリスは両腕で頭を抱え、その場にしゃがみ込む。

(もしかして──)