「冬になると、水路の水はカチコチに凍ってしまって水を使いたくても使えなくなるのです」
「凍ってしまって? じゃあ、その間はどうしているの?」

 アリスは驚いて尋ねる。

「積もっている雪や氷を溶かして使います。ただ、気温が低いので水に戻すのにも一苦労で」
「それはそうよね」

 アリスは頷く。

 水を使いたいと思ったら雪を取りに行くと言っても、吹雪の日などは外に出るのも一苦労だろう。それに、雪を溶かすのにも時間がかかるし、手も冷たいはずだ。

(なんとかできないのかしら……)

 水路にお湯を流しても、すぐに冷めてしまうから無駄だろう。もっと根本的な改善策を……と考えているときに、ふとビクリス国のハーレムにいたときに一番の仲良しだった妃──ケイトが何気なく話したことを思い出した。


 ──あれは、ハーレムにある妃用の共同風呂で、一緒にお風呂に入っていたときのことだ。

『ビクリス国は、お湯が豊富で贅沢ね。わたくしの故郷は寒いから、こんなにたくさんのお湯を沸かすのは大変だわ』

 ケイトは湯船に満たされたお湯を手で掬い、しみじみと眺める。

『そうなの?』
『ええ、寒いと水温も低いから、お湯にするのも一苦労なのよ。水路は地下に作るのだけど、それでも冷たいものは冷たいもの』
『地下に水路を? どうして?』