「はい。陛下は毎年一回は、必ずいらっしゃいます。ほんの数十分程度ですが、問題がないかご自身の目で確認されるのです」
「へえ」

 ウィルフリッドは国王だ。福祉以外にもやらなければならない仕事が盛りだくさんで、非常に忙しい。年に一度、数十分とはいえ、かなりの負担になるだろう。

(わたくしも、頑張らないと)

 アリスは決意を新たに、救貧院を見て回る。そこには、様々な事情で住む家を失った人々が暮らしていた。一階部分は食堂や集会室、就業支援のための訓練をする部屋などがあり、二階は八人部屋の居室が並んでいる。

「何か困っていることはない?」

 アリスは施設で働く女性に話しかける。

 女性達は顔を見合わせてから、おずおずと口を開いた。

「冬になると、水に不自由するので困っています」
「水に?」

 アリスは聞き返す。
 今日町を見た限り、システィス国の王都には水路が張り巡らされており、水の設備は整っているように見えた。アリスが今暮らしている王宮でも水路から水を引いており、いつも新鮮な水が汲めるようになっている。

「王妃様はここの冬がとても厳しいことはご存じですか?」
「ええ」

 実際に体験したことはないが、とても寒いということは書物や人から聞いた話で知っている。