「ねえ、エマ。もしかしてあれは、地下貯蔵庫への入り口?」
「はい、そうです。よくご存じですね」

 エマはびっくりした様子だ。

「やっぱり! 本で読んだの」

 アリスは笑みを零す。勉強したものを現実で目にするのは、なんだか嬉しい。


 その後、アリスは中心地から馬車で十分ほどの場所にある、城下で一番大きい救貧院に向かった。

(思ったより立派なのね)

 アリスは二階建ての建物を眺める。思った以上に清潔感のある立派な建物で驚いた。
 今日アリスが訪問することは事前に知らせてあったので、すぐに院長が出迎えに出てきた。

「ようこそいらっしゃいました、王妃様」
「押しかけてごめんなさい。どうしても、民の暮らしぶりを一度見てみたくて」
「いつでも歓迎します」

 院長は口元に笑みを浮かべる。

「先日も、陛下がいらっしゃいました」
「陛下が?」

 アリスは意外に思って聞き返す。