数日後、ウィルフリッドは約束通り、アリスの外出に案内兼護衛の騎士を付けてくれた。

 アリスはまず、馬車で中心街へと向かった。ここの馬車通りがシスティス国一の繁華街だとヴィクターに教えてもらったからだ。道の両脇にはたくさんの店が軒を連ねており、そこかしこから客入れの呼び声が聞こえてきた。

「とても賑やかね」

 アリスは同行しているエマに話しかける。
 この国に嫁いで来る日も馬車でこの道を通ったはずだが、緊張していたせいかほとんど覚えていない。

 馬車を降りたアリスはゆっくりと歩きながら、店頭に並んでいる商品を眺める。品ぞろえが豊富で、人々が豊かな暮らしを送れていることがよく分かった。

「システィス国は今から秋にかけてが一年で最も賑やかな季節なんですよ」
「一年で一番賑やか?」
「はい。システィス国の冬はとても寒いので、特に雪の日は皆外に出ようとしません。だから、冬場は人通りがぐっと減ります」
「なるほど。そういうことね」

 アリスが生まれ育ったアーヴィ国は冬も比較的温暖なため、季節による人出の差はない。国によってこうも違うのかと、とても興味深い。
 しばらく歩くと水路があり、それを越えるといくつもの民家が並んでいるのが見えた。各民家の脇には、とても小さな小屋がある。

「あ、あれはもしかして──」

 システィス国について調べたとき、各家庭には基本的に地下貯蔵庫があるので、そこに越冬用の食料や燃料を蓄えておいて冬の間に少しずつ使うという記載を見た。