(もしかして、抱き枕じゃなくってウィルフリッド陛下だったの⁉ わたくしったら、何やってるのー!)

 サーッと血の気が引くのを感じた。
 ばちっとウィルフリッドと目が合い、アリスは気まずさからなんとかこの場をやり過ごそうと、へらっと笑う。ウィルフリッドは「まあ、いい」と言って、はあっと息を吐く。 

「この結婚に当たって、きみに伝えておかなければならないことがある」
「はい」

 ウィルフリッドの態度にこれから重要な話が始まると悟ったアリスは、背筋を伸ばして姿勢を正す。

「アリスを王妃に迎えたのは、きみの力を利用したいと思ったからだ」
「え? 力とは?」

 アリスには特別な力はない。なんのことを言われているのか戸惑い、アリスは聞き返す。

「以前たまたまきみがいる社交パーティーに参加したことがあり、諸外国に関する知識が豊富で語学力も堪能であることを知っていた。それに、アーヴィ国は面積こそ小さいものの物流の拠点で経済的にも潤っている。だから、政治的利用価値があると判断して結婚を申し入れた」

(ああ、そういうこと)

 政治的利用価値があるから結婚を申し込んだと言われてすんなりと納得した。どうして自分が望まれたのか、アリス自身も不思議だったから。