数分後、アリスは平身低頭で男──ここシスティス国の国王、ウィルフリッド・ハーストに謝罪をしていた。

「本当に申し訳ございません。なんとお詫び申し上げればいいか──」

 ようやくしっかりと目を覚ましたアリスは、自分の失態に驚愕した。
 昨日システィス国に嫁ぎ王妃となったというのに、酒に酔い寝落ちして、寝ぼけてすっかりそのことを忘れ、知らない部屋で見知らぬ男が横に寝ていると完全に勘違いしてこともあろうか大絶叫したのだ。

 悲鳴を聞きつけた衛兵や女官たちが何事かと部屋に雪崩れ込み、アリスがさらなる悲鳴を上げたのは言うまでもない。

「まさか初めての朝に、顔を見るなり妻に悲鳴を上げられるとは思ってもみなかった」

 ウィルフリッドはふっと笑う。

「いえ、あの──」

 アリスの背中につーっと嫌な汗が伝う。

 だって、ひとりで寝ていると思ったら隣に人がいたのだ。驚くなというのは無理だと思う。

「昨晩はあんなに強く俺を求めてきたというのに、酷い話だな」
「へ?」

 ウィルフリッドは青い瞳でアリスを見つめたまま、意味ありげに口の端を上げる。その瞬間、アリスは自分が首まで赤くなるのがわかった。

(強く求めた? わたくしが? 本当に?)