抱き枕とはなんのことだろうか。

(まさか、俺を抱き枕と勘違いしている?)

 アリスに抱きつかれたままベッドに横たわるウィルフリッドは、そっとそこから抜け出そうとする。しかし、少し離れるとすぐにアリスがぎゅっと抱きついてきて離れられない。

(まさか、朝までこのままか?)

 またしても、ウィルフリッドの想定外の状況だ。
 ウィルフリッドは自分にしっかりと抱きつくアリスの顔を窺い見る。長いまつ毛に縁どられた目はしっかりと閉じられており、すーすーと規則正しい寝息を立てている。

「参ったな。勘弁してくれ」

 ウィルフリッドははあっとため息を吐く。
 とても眠れそうにない。長い夜になりそうだ。

 ◇ ◇ ◇

 ふと、瞼越しに眩しさを感じた。薄らと目を開けると、朝日が部屋に差し込み、部屋の中を線上に照らしている。

「もう朝?」

 心地よい布団の温かさに、アリスはまどろむ。なんだか昨晩はぽかぽかしていて、とても寝心地がよかった。きっと、ちょうどいい抱き枕があるおかげだ。
 アリスは再び目を閉じ、抱き枕に体ごと絡みつくと頬擦りをする。