(まさか、初夜にひとり酒を煽り、先に寝てしまうとは……)

 先ほどまで、怒り出したらどうしようか、泣き出したらどうしようかと様々なシチュエーションに備えて心の準備をしてきたのに、どれも当てはまらない。このパターンは想定していなかった。

「おい、起きろ。話がある」

 ウィルフリッドはアリスの肩を揺する。すると、横向きに丸まっていたアリスが「うーん」と言って仰向けに寝返りを打つ。薄らと目を開けたアリスは、ウィルフリッドを見るとへらっと笑った。

「陛下。いらっしゃったのですね。よかった、今回は来てくれて」
「今回は?」

 ウィルフリッドはアリスの言葉の意味が分からず、困惑する。アリスは両腕を伸ばしてウィルフリッドの首に回すと、ぎゅっと抱きついてきた。
「おいっ」

 ウィルフリッドは慌てる。アリスに引っ張られる形でベッドに倒れ込み、慌てて起き上がろうとするとアリスの腕に力が籠った。

「わたくしの抱き枕、取らないで!」
「は?」
「ふふっ、あったかい」

 幸せそうに微笑むアリスはウィルフリッドの首筋に頬ずりする。

「……抱き枕?」