「では、今すぐ寝室に行ってください。一目ぼれしたお相手が嫁いできたというのに、ヘタレですか」
「は? 誰が一目ぼれだ」
「一目ぼれではないのですか? 臣下の反対を押し切ってアリス妃を娶ったのですから」
「………」

 確かに臣下の反対を押し切ったが、一目ぼれではない。彼女の持っている能力に興味を惹かれただけだ。

 ロジャーは黙り込んだウィルフリッドのそばに歩み寄ると、ひょいっとその手から書類を取り上げる。

「何をする!」

 ウィルフリッドはロジャーを睨む。

「こちらの資料は特に急ぎではございません。陛下、よい夜を」

 ロジャーはウィルフリッドを見下ろし、にこりと微笑む。
 ウィルフリッドは再びはあっと息を吐き、寝室へと向かったのだった。