子供を持てないなら、むしろ都合がいい。ウィルフリッドは一生、子供など持つつもりがないのだから。

(こんな血、途絶えてしまえばいい)

 ウィルフリッドは自嘲気味に笑った。 

 多くの来賓が見守る中、結婚式は聖堂で行われた。
 新婦となるアリスを迎えるべく、ウィルフリッドは祭壇の前に立つ。

(彼女はどんな気持ちで嫁いでくるのだろう)

 ウィルフリッドはその即位の経緯から、酷い悪評がある。その噂を聞き断られる覚悟もしていたが、アーヴィ国からの返事は【是非この話を進めたい】という前向きなものだった。

(もしかすると、祖国で厄介者扱いされているのかもな)

 異国の王族に嫁いだ王女が出戻ってくるなど、滅多にある話ではない。厄介者扱いされても不思議ではないから、システィス国からの結婚の打診は渡りに船だったのかもしれない。

 アーヴィ国王に伴われて三年ぶりに再会するアリスは、あのときと変わらず小柄で可憐な女性だった。実年齢の二十二歳よりも、少し幼く見える。

 アリスは緊張からか強張った表情で、ウィルフリッドを見つめる。

 怖がられているのかと思ったウィルフリッドは、敢えて彼女から視線を逸らした。差し出した手に重ねられた手は、力を入れれば骨が砕けてしまいそうなほど華奢で、とても小さかった。