顔? もしくは体? まだほとんど会話もしていないのだから、性格ということはないはず。

 アリスは自分の体を見下ろす。
 胸は普通にあるのだが、着やせするタイプのようで傍から見ると体型も子供っぽく見えるだろう。それに、童顔だ。

「わたくし、そんなに女性として魅力がないのかしら?」

 正直、二回も初夜に夫に放置されることになるとは思ってもみなかった。これでも、アーヴィ国では『花のように可憐な姫』と持てはやされていたのにさすがにショックだ。

「落ち着くのよ。水でも飲みましょう」

 アリスは気を紛らわせようと水差しからグラスに水を移し、それを一気に仰ぐ。

(あら? これ、もしかしてお酒?)

 水だと思ったものは、水ではなかった。気付いたときには時すでに遅し。
 急激に体温が上がり、頭がふわふわする。

「うふふっ。二回も初夜すっぽかしにあう王女なんて、世界広しと言えどわたくしだけではないかしら?」

 なんだか妙に楽しくなってきて、アリスは再びグラスに酒を注ぐとぐびっとそれを飲んだ。
 ふわっとあくびが漏れる。今回の輿入れは昨晩遅くにアーヴィ国から到着し、翌日に結婚式を行うという強行軍だった。実を言うと、もうくたくただ。

「……ちょっとだけ寝ましょう」

 アリスはベッドの端に横になる。意識はすぐに、闇に呑まれた。