「ええ、ありがとう」

 アリスがお礼を言うと、エマ達はお辞儀をして部屋を出て行った。

 ひとりきりになったアリスは、改めて部屋の中を見回して大きなベッドの端に腰かけた。

「大きなベッド」

 アリスがアーヴィ国にいたときに使っていたベッドもそれなり立派なものだったが、この部屋にあるベッドはそれよりもさらに一回り大きい。アリスが横向きで寝てもはみ出さない幅がある。
 シーツに手を這わせる。さらりとした上質なコットンは、とても優しい触り心地だ。

「今回は、いらっしゃるかしら?」

 一度目の結婚式の夜、アリスは夫の来訪を今か今かと待っていた。しかし、夜が白み始めても夫が現れることはなく、虚しさだけが残ったのを覚えている。