(ルシア様の妹君が、システィス国の王弟殿下に嫁いでいたなんて)
近隣国の王女なのでその妹がシスティス国の王族に嫁ぐのはなんら不思議なことではないのだが、思ってもみなかった縁に驚いた。
「本当に突然で驚きました。一体どのようにして知り合ったのですか?」
しおらしい様子で問いかけてきているように見えるが、アリスを見つめる目は興味津々と言ったところか。
(なるほどね)
要は、ハーレム解散直後に面識のないウィルフリッドとの結婚を決めたアリスのことを、警戒しているのだろう。もしかすると、どこかの家門から娘を王妃に推してほしいとでも頼まれていたのかもしれない。
「祖国に戻って程なくして、陛下からの求婚をいただきまして──」
どのように知り合ったかも何も、結婚式が初対面だ。
アリスがちらりと横を見ると、ウィルフリッドの鋭さのある青い瞳と視線が絡み合った。ウィルフリッドはノートン夫妻へと視線を向ける。
「ずっと昔だが、ビクルス国で開催された舞踏会で一度だけアリスを見かけた。そのときの姿が忘れられずにいたところ、独身になったという噂を聞いていても立ってもいられずに求婚した次第だ」
ウィルフリッドが補足する。
(あら?)
そんな話は初耳だ。アリスの立場が悪くならないように咄嗟に作り話をしてくれたのだろうか。