「陛下、この度は誠におめでとうございます」
男性の挨拶に合わせ、横にいる女性も頭を下げる。
(叔父上って言っていたわよね。叔父上って確か──)
事前に勉強していた、この国の王族に関する知識を思い出す。
「アリス、彼は私の叔父上で、この国の宰相をしている」
ウィルフリッドの言葉を聞き、アリスは(やっぱり)と思う。たしか彼は、即位当時まだ幼かったウィルフリッドの補佐官として敏腕を振るい、今も宰相としてこの国の貴族に絶大な影響力を持っている。
ちらほらと白髪が交じり始めたグレイヘアを後ろになでつけ、口元には整えたひげが生えた渋みのある男性だった。いわゆる、イケオジというやつだ。そして、傍らにいる艶やかな黒髪が印象的な美人は、彼の妻だろう。
「初めまして、アリス妃殿下。宰相をしているヴィクター・ノートンです。こちらは妻のイリスです。以後お見知りおきを」
「初めまして、ノートン卿。イリス様」
アリスは失礼がないよう、丁寧にヴィクターに挨拶を返す。
「陛下が急に結婚を決めて、驚きました。なんでも、アリス様は昨年までビクルス国のハーレムにいたとか」
「え?」
「姉のルシアからも少し話を聞いております。突然の解散だったとか」
アリスは驚いて目を丸くする。ルシアとは、アリスの前夫──ビクルス国のクリスの寵妃だった女性だ。
「まあ、そうだったのですね。ちっとも存じ上げませんでした」
扇で口元を隠しつつ、アリスは適当な返事を返す。
男性の挨拶に合わせ、横にいる女性も頭を下げる。
(叔父上って言っていたわよね。叔父上って確か──)
事前に勉強していた、この国の王族に関する知識を思い出す。
「アリス、彼は私の叔父上で、この国の宰相をしている」
ウィルフリッドの言葉を聞き、アリスは(やっぱり)と思う。たしか彼は、即位当時まだ幼かったウィルフリッドの補佐官として敏腕を振るい、今も宰相としてこの国の貴族に絶大な影響力を持っている。
ちらほらと白髪が交じり始めたグレイヘアを後ろになでつけ、口元には整えたひげが生えた渋みのある男性だった。いわゆる、イケオジというやつだ。そして、傍らにいる艶やかな黒髪が印象的な美人は、彼の妻だろう。
「初めまして、アリス妃殿下。宰相をしているヴィクター・ノートンです。こちらは妻のイリスです。以後お見知りおきを」
「初めまして、ノートン卿。イリス様」
アリスは失礼がないよう、丁寧にヴィクターに挨拶を返す。
「陛下が急に結婚を決めて、驚きました。なんでも、アリス様は昨年までビクルス国のハーレムにいたとか」
「え?」
「姉のルシアからも少し話を聞いております。突然の解散だったとか」
アリスは驚いて目を丸くする。ルシアとは、アリスの前夫──ビクルス国のクリスの寵妃だった女性だ。
「まあ、そうだったのですね。ちっとも存じ上げませんでした」
扇で口元を隠しつつ、アリスは適当な返事を返す。