そして、祭壇の前には一人の長身の男が立っていた。
遠目にも、銀色の髪の毛がキラキラと煌めいているのがわかる。
アリスは父に伴われながら、ゆっくりと足を進める。
祭壇の前に立つウィルフレッドが振り返り、視線が絡まり合った。まるでアリスの心の奥底を見透かしてしまいそうな、深い青色の瞳だ。身長は高く、小柄なアリスとは頭ひとつ分以上違う。
(綺麗な人)
まるで、彫刻のように整った見目をしている。
アリスはウィルフレッドの顔をじっと見つめる。
しかし、ウィルフレッドはアリスから視線を逸らすようにかすかに目を伏せると、白い手袋をした右手を差し出した。アリスはそこに手を重ねる。
(大きいのね)
同じ男性の手なのに、父とはずいぶん違う、ごつごつした大きな手だった。おそらく、普段から剣を握っているからだろう。
ふたりが祭壇の前に並ぶ。厳かに式は進行し、最後に大司教が片手を天に向かって伸ばした。
「──ここに、ふたりが夫婦となったことを宣言します」
参列者達が盛大に拍手をしてふたりの門出を祝う。
アリスはちらりと横に立つ男を窺い見てから前を向いた。
(今度はどんな結婚生活になるかしら?)
ステンドグラスから降り注ぐ光のシャワーに目を細める。
願わくば、穏やかで幸せなものになればいいと思った。