システィス国に婚姻申し入れに対する返事をしたのち、アリスの輿入れはあれよあれよと話が進んだ。
 両国の外交官が調整を行った結果、アリスは返事をした半年後にはシスティス国に嫁ぐことになったのだ。

(いよいよね)

 システィス国の女官たちにウエディングドレスを着せられながら、アリスはどこか不思議な気分だった。

 一年前までビクリス国のハーレムにいたのに今はシスティス国の王都にある大聖堂で王妃になるべく着飾っているなんて。人生とは何があるかわからないものだ。

「アリス殿下。こちらを」

 着付けを手伝ってくれた女官が、トレーに載せたティアラを差し出す。真珠がちりばめられた、上品かつ豪華なティアラだ。少し屈むと、別の女官がそれを大切そうに両手で持ち、アリスの頭に載せる。

「とてもお綺麗でございます」

 女官たちはアリスを見つめ、満足そうに笑みを零す。

「ありがとう」

 褒められて悪い気はしない。アリスは微笑んで女官たちにお礼を言うと、鏡を見た。